予感めいた話


薄暗い洋館の一室で、ユーファナスは灰色のラビネと一緒に居た。

ラビネの青年は相変わらず不健康そうだが、輪をかけて顔色が悪く見える。

「それで?」

壁にもたれて聞くユーファナスに、ファヒナムは意外そうなまなざしを向けた。


「それもこれもないだろ…」

もう皆知っている事じゃないか、と肩をすくめて笑う。
「タイムオーバーってことだな。
かなり魔法の力が弱まって、闇に飲まれそうになっている。
この流れは僕らにはどうにもできないのさ。
数年前からその気配はあったらしいんだが、早まっているみたいだよ」

ユーファナスがその気配というものをはっきり感じ取ったのは数か月前だった。
予感を無視して日常を続けることも考えたが、別の道を模索するため方々を走り回っている。
そのために昔の仲間を探し出そうとしているのだが、残る時間は十分ではないようだ。

ファヒナムは実験用具を丁寧に包装紙に包みながら話を続ける。

「…それで、何とあのエドワード博士もミュラー博士を手伝い準備に明け暮れているんだってさ。
少しは希望を持てる話じゃないか?」

お互い押し黙ってしまい、窓の外を見やった。
夕方からの雨はやんで、宵の明星が月の横に寄り添うように輝いている。



「まったくフレンシルのやつは、少しは僕を手伝ってくれてもいいものを」

どうやら彼はここの所、昼夜を問わず片付けや荷造りをしていたらしいが、
執事のユキワラベは我関せずのようだ。

「そんなにも早いのか…」

「新聞を見てるだろう?多分、来月にはもう…。あんたはどうするんだ?

僕は昔いた場所に帰るよ。
黄泉路との間にある、我々にとって必要な力が残るだろう場所へ。
妖精たちが暮らしてるからまだ安全なんだ。
一緒に何人か行く事になっている。僕みたいに、まだ眠れない事情のある者達が…。

で、君たちもどうかな」

小さな包みを結び終えると、ファヒナムは真面目な顔つきで正面からユーファナスを見た。
「あの子を眠らせるのか?」
よく見ると悲壮な顔をしている。普段ヘラヘラしている奴だけに深刻さを物語っていた。
「‥‥」

「博士の所で眠った方がそのままでいられる。いつかまた目覚める時に、
まるで、次の日の朝に起きるように…。

それは分かってるよな?多分そのほうが幸せなのかも知れない…。

いや、あんたが決める事だ。あんたたち2人で…。何せ…」
ひと息切って青年は言った

「世界が、終わるんだから」

窓に風が吹きつけて、みしみしと鳴っていた。



11-5.jpg





~続く。



エドワード博士が最後にはリヴリーのため協力する妄想を入れてみました

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